こんにちは。
兵庫県の姫路城下町にある隠れ家的なお店
大きいサイズのセレクトショップUMEYAです(^^)
今回は、「お直し」に関して少し書いてみようと思います。
はじめに
「この服、もう少しサイズが合えば…」そう思ったことはありませんか?
当店では、店頭商品をお買い上げ頂く場合、お洋服のサイズ微調整やデザインの小変更といった「お直し」に対応しています。
公式サイト上やブログでその一部をご紹介しているためか、ありがたいことに「この部分を直してほしい」というお問い合わせをいただく機会が増えました。
中には「お直し専門店よりも料金が安いから」という理由でご相談くださる方もいらっしゃいます。
しかし、お直しをご依頼いただく前に、ぜひ「お直し」の本質について考えていただきたいことがあるのです。
この記事では、お直しが持つ意味や、依頼する際の注意点について詳しく解説します。
大切な一着をより長く、より素敵に着こなすために、ぜひ最後までお読みください。
お直しは「計算された形を崩す」行為
洋服は、単に布を切り貼りして作られるものではありません。一枚の服には、着心地やシルエットを美しく見せるための「緻密な計算」が隠されています。デザイナーが考案したものを、パタンナーという方々が体の動きやラインを考慮して設計図(パターン)を作成し、それに基づいて生地を裁断します。


計算され尽くしたパーツを縫い合わせることで、一着の洋服が完成するのです(一般的には)。
つまり、「お直し」とは、この計算された完璧なバランスを一度「崩す」行為であることを、まずご理解いただきたいのです。
シルエットや着心地が変わるリスク
計算された形を崩すお直しは、時として着用感に予期せぬ影響を与え、着心地やシルエットを損なうリスクを伴います。
例えば、「袖ぐり(アームホール)が大きくて不格好なので、少し小さくしたい」というご依頼を考えてみましょう。
確かにお直しによって袖ぐり自体は小さくなりますが、その分、背中周りのフィット感や、腕を上げたときの脇部分のつっぱり具合が大きく変わってしまう可能性があります。
最適なサイズ調整を見極めるには、実際にお洋服に体を通した状態で採寸し、慎重に判断する必要があります。
安易なお直しは、せっかくのお洋服を「改悪」してしまうことにもなりかねません。

最近では遠方にお住まいの方からのお問い合わせも増えていますが、ご依頼内容によっては特に慎重な検討が必要です。
「パンツの裾を〇cm短くしてほしい」といった比較的単純な作業であれば、遠方からでも対応可能です。
しかし、袖ぐりや身幅、ウエスト、わたり幅の調整など、お客様の体に合わせて確認が必要な箇所については、細心の注意を払わなければなりません。
最終的なご指示があればその通りに対応いたしますが、可能であればお近くのお直し専門店で、実際に着用した状態を見てもらいながら相談されることを強く推奨します。
「小さく→大きく」「短く→長く」は困難
お直しは、基本的に生地をカットして縫い直す作業です。そのため、大きいものを小さく、長いものを短くすることは物理的に可能です。極端な話、小さく短くするのであれば、どんな形にでもできます。
しかし、その逆はどうでしょうか。
生地には折り返しがあるので、その寸法と縫い方によって、ほんの少し大きく、長くすることは可能です。
しかし、足りない分は延長しない限り、小さいものを大きく、短いものを長くすることは極めて困難です。
それなら、同じ生地を足せばいいのでは?
多くの方がそう思われるかもしれません。しかし、そこには次の問題が立ちはだかります。
オリジナルの生地やパーツは手に入らない
お直しに対して「完璧」を求めるのであれば、お直し自体を考え直した方が良いかもしれません。その理由の一つに、「市販されている洋服の生地やパーツは、一般的には手に入らない」があります。
アパレルメーカーが服を生産する際、生地やボタン、ファスナーといった資材はそのモデルのために大量に用意され、一般市場には流通しない、もしくは大量でないと手に入らないものがほとんどです。また、一部の高級ブランドを除き、過去の製品の生地やパーツをストックしているメーカーはほぼ無いのが実情です。
例えば、「ダウンジャケットに穴が開いたから、同じ生地で塞いでほしい」とご依頼をいただいても、全く同じ生地をご用意することは不可能です。どんなに似た色の生地を探しても、光の当たり方や素材感の違いで、補修箇所がパッチワークのように目立ってしまいます。
ボタンやファスナーも同様で、どれだけ品揃えのいいパーツ屋さんがあったとしても、全く同じものを見つけ出すことは、ほぼ不可能と言えます。

過去には、どうしても丈を長くしたいというお客様が、同じパンツを二本購入して「この生地を使って丈を伸ばしてください」とご依頼されたケースもありました。これは、お直しの本質をよく理解されている方の判断と言えます。
お直し代は「技術料」。服の値段とは無関係
最後に、お直しの料金についてお話しします。
まず、当店の「お直し」は利益を目的としていません。これは、「洋服は、お客様の体と心に合って初めて完成品になる」という理念に基づいています。特に大きいサイズを扱う当店にとって、店頭に並ぶ服は未完成品。「お直し」は、お一人お一人に合わせて商品を調整し、完成品にするための最終工程と捉えているため、作業に必要な工賃のみをいただいています。
この方針をお伝えしたことで、料金の安さを理由にお問い合わせいただくことや、当店以外の商品のお直しをご依頼いただくことが増え
ました。そのため、現在は一定のルールを設けて対応させていただいております。
お直し代は職人への対価
ここで最もご理解いただきたいのは、お直し代は「作業工賃」であり、技術を持つ職人が費やした時間への対価であるということです。
たとえ1,000円のTシャツであっても、10,000円のTシャツのお直しと料金は変わりません。
服の元値とお直し代は、全く別の価値基準で成り立っています。

お直しは、一着の服に新たな命を吹き込む素晴らしい技術です。この価値をご理解いただいた上で、ご相談いただけると幸いです。稀にお直し代の値引き交渉をされる方がいらっしゃいますが、当店では一切お受けしておりませんので、予めご了承ください。
愛着ある一着と長く付き合うために
お直しは、単なるサイズ調整以上の意味を持ちます。それは、計算されたデザインに手を加え、時には専門的な技術と工夫を要するクリエイティブな作業です。今回ご紹介した4つのポイントを心に留めておくことで、お直しに対する理解が深まり、より満足のいく結果につながるはずです。
もしお直しを検討しているお洋服があれば、何よりもまずは信頼できるお店に相談してみてく
ださい。その一着が、あなたにとってさらに特別な存在になるかもしれません。
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